2015年1月10日土曜日

Lean UX ーリーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン

Lean UX ―リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン (THE LEAN SERIES)
を読みました。

青いリーン(エリック・リースのリーン・スタートアップ)を読んで、学べるものがとても多かったので、リーン・スタートアップの考え方とUXデザインを合わせるとどうなるんだろうというのが気になって購入してみました。感想としては、青いリーンは新しい発見が多く、ものづくりに対する考え方が私の中で劇的に変わったきっかけになりましたが、白いリーンはどちらかというと既にわかっていたものの再確認が多かったです。自分が成長したのか、本書の特徴がそうなのかはよくわかりませんが、個人的には新しいものを学んだというよりは現状の振り返りに大いに役立ちました。

現状を振り返る上で最も参考になったのが、3つの基盤と15の方針でした。3つの基盤というのはデザイン思考、アジャイル開発、リーン・スタートアップの三つです。15の方針としてはチームのありか(横断的、小規模、課題重点型、共通理解を持つ)から、プロセスの進め方(無駄を取り除く、バッチサイズを小さく、仕事の外面化、分析より形にする、中間生成物中心からの脱却)やマインドセット(失敗を許容する、ヒーローじゃなくてみんなでやる、アウトプットよりアウトカム、ビルから出る)まで、リーンを実行する上の様々な基準が定義されていました。この15の方針に現状のチームやプロセスを照らし合わせてみて、満たされていない項目を少しずつ改善していくのが、ユーザーの声をいち早く取り入れられる良い仕組み構築につながると思いました。

プロセス編はかなり細かく、具体的なワークシートなども用意されていて、課題ステートメントをどのように作成すると良いかとか、デザインスタジオをどのように進めると良いか(配る紙のサイズまで指定していたのには驚いた)、スタイルガイドをどう作ると良いかなどが書かれています。また、様々な種類のMVP(充実度が底〜高のプロトタイプやメールやランディング・ページのような非プロトタイプ)が紹介されていたり、リクルートやスケジューリングを含む定性調査の仕方が紹介されています。チームやプロジェクトには各々のコンテキストがあると思うので、ここに書かれているものを全て実行すればいいという話ではなく、この中で現状に最もフィットしていて、現状の課題を解決してくれるものをいくつか選んで賢く使っていくと良いと思いました。

実践編ではLean UXの実現(主に、頻繁なユーザーインタビューからのフィードバックをどのように取り入れるか)をアジャイル開発にどのように組み合わせていくと良いかの提案が書かれています。失敗例として、スタッガード・スプリントモデルが紹介されていて、このモデルだとデザイナーが作ったものを開発者に流すやり方になってしまうので、コラボレーティブなチーム作りができないことが問題だと指摘しています。本書は各イテレーションに一つのテーマを設定して、みんなで計画・実行・評価することでより優れたチームを築くやり方を薦めています。

通して、この本で得られた大切な気づきとしては「アウトプットではなくアウトカム」「コラボレーティブ・デザイン」の二つです。日頃から何かドキュメントを書かないとアウトプットを出してないような後ろめたさのようなものがありましたが、この本を読んでドキュメントを書くのにかかる時間をもっとアクティブ・ユーザーが増えたとかユーザーの満足度が高くなったといった実際の成果(アウトカム)を導くために投資しようと思うようになりました。また、デザイナーとして、イメージファイルのようなアウトプットを出すことよりも、チームのみんながクリエイティブにアイディアを出し合う環境を作るためのファシリテーション、つまりチームやプロセス、環境のデザインにより力を入れていこうと思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿