Ti Chang - We’ve Come A Long Way
初日のディナーで、Tiさんとは同じテーブルに座ることになり、彼女の犬の写真を見せてもらったり、その後も他のセッションで一緒になったりして、とても魅力的な人柄の人だと思ったので、どんなセッションになるのか気になって参加してみました。
"Hello, I am a sex toy designer"ではじまるプレゼンテーション。100年前には女性の性欲は病気とみなされ、お医者さんが女性の性器をマッサージして"治療"する過程でセックス・トイの原型となるものが使われた。その後ポルノ映画が発達し、セックス・トイは治療の道具ではなく快楽と関係するものであることを大衆に理解されはじめたが、公に話すことはタブーとされてきた。Tiさんがセックス・トイをデザインした理由は、ものづくりの全てのプロセスに参加したかったのと(そのために会社を立ち上げたとのこと)、また女性のために役に立つことをやりかったからだそうだ。あきらかに男性の視点でデザインされた色違いの大きいディルドではなく、本当に女性たちが使って喜んで恥ずかしがる必要のないものを作ろうとした。それでできたのがCraveの製品群である。
確かにこのデザインなら恥ずかしがる必要もない
彼女はもうセックス・トイを使うことを恥ずかしがる必要のない、Modernな時代が到来したと言っていましたが、セックスについて話すことはもちろん若者がセックス自体やらなくなった日本社会から来た私にとっては、そのような時代が来たんじゃなくて、彼女のような鋭い問題意識を持った人々がそのような時代を作り上げているのだと思いました。
Stanley Hainsworth - Ten Years Of Instant Change
10年間のトレンドの変化でも見返すものだろうかと思って参加したのですが、想像したものとまったく違う形のセッションでした。ラウンジに入ると椅子が丸いレイアウトで配置されていて、お互いの肩をぶつかるくらいの狭さ。Stanleyさん曰く、AA(アルコール中毒のための匿名の集まり)のようなスタイルでやるとのことで、実際その通りでした。
Stanleyさんの個人的な体験の話からはじまる。LAで俳優になろうと思って暮らしていた。しかし突然親戚の一人が事故を起こし、その奥さんは死亡、本人は収監され、その夫婦の二人の子供をいきなり引き取ることになる。それをきっかけに、人生のパスが一転。キャリアパスも俳優からデザイナーに変わった。このような変化を括りぬけてくる際に、自分の幸いな無知(A blessed ignorance)が役に立ったと思っている。みんなも自分の人生を変化させた、できごとや気づきのことを共有してほしい。
実に様々な体験や気づきがその場で共有されました。これは私にとってはとても驚きで、コンファレンスというのは知識や洞察を共有する場だと思っていたのですが、このようにとても個人的な体験や感情まで共有することが可能であることに深く感動しました。最後に気づきを共有した人は、ベルギーに行ったときに2000種類のビールを見て興奮し、「誰かがこのビールをデザインしている」ことに気がついたと言います。そして、自分が好きなことをやるためにスタジオを作り、今は大好きな食品を扱う仕事をしていると言いました。デザイナーは世の中のみんなに対して、責任を持つとも言いました。なぜなら、彼がベルギーで体験したように、誰かがデザインしたものを他の誰かが触れるからです。この話は特に目から鱗でしたが、他にもたくさんの話を聞くことができて、自分の人生で起きた変化についても考えることができました。
Jonah Lehrer - On Failure
ここで出会ったみんなに私はCreative Directorのことはよくわからないけど、ラインナップの中で有名な人はいるの?と聞いてまわると多くの人がJonah Lehrerさんのファンだと言いました。The New Yorkerなどの著名なメディアに長く寄稿し、幅広いファンがいるようです。
今回のコンファレンスの進行やプログラムのアレンジなどを担当したChristopher Simmons(左)とJonah Lehrer(右)
マイリトルポニーというアニメを見ると、ポニーたちはお尻にタトゥーをいれている。それはポニーたちのアイデンティティーそのものである。そのタトゥーを見つける方法は一つしかない。私たちがそれを愛するかどうかだ。それはまるで下着のようなもので、意識してなくても常に自分に密着しているものであり、またそれはロメオとジュリエットと一瞬で燃え上がる恋とは違って、人生をかけてやり続けることでなければならない。Jonahさんの場合それは書くことだ。2年半ほど前に、剽窃のことで騒動になり、一度は書くことを辞めようと思ったこともある。しかし気がつけばまた書いていた。それが何かを愛するということ。また、そのときの失敗で気づいたことも多かった。楽で簡単というのはいつもベストなやり方ではない。何かを創造するということは大変なことであり、苦しいプロセスや失敗を抱擁することで良いよいクリエイターになれる。
変化に適応する能力だけではなく、変化しない何か(愛する何か)を持つことの重要性についてあまり考えたことがなかったなぁと思いました。マイリトルポニーから人生の哲学を導く洞察は素晴らしいものだと思ったので、これからは彼の寄稿などをチェックしてみようと思いました。
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