2015年6月17日水曜日

公共のためのデザインの可能性


に参加してきました。

公共のためのデザインに取り組むためには、人間を中心においてモノ・人・社会・環境との関係を見極め、「デザイン」を再定義・再認識しなければならないという話(井口先生)から、デンマークのmind labやワコールの公共性を考えたサービスデザインの紹介(長谷川さん)とソーシャルセンタードデザインのマインドセットやプロセスの話(山崎先生)まで、普段から私もなぜこのような取り組みがもっと行われてないのだろうと思っていたものに対する問題提起が多く、興味深く聞かせていただきました。

ディスカッションで、ビジョンをしっかり決めていない企業が多く、ビジョンをもってそれを実践する形として公共性を実現する必要があるという話には特に強く共感しました。ビジョンっぽいなにか(スローガンとかタグラインのようなもの)をもっている企業は多いけど、それを噛み砕いて実際の公共への貢献を行っている企業は少ないのではないかと私は考えていて、例えば「社会を良くする」とか「女性を幸せにする」みたいなことを表面では言いながら、実際はどうしてもビジネスのことを優先してしまう経営判断が多いと感じていました。

そのような企業を説得する手として「ブランディング」と関連づけて考える(井口先生)アプローチはとても実践的で有効な方法だと思いました。まずはトップがビジョンを描いて、そのビジョンをブランド資産化し、組織の各々がビジョンを咀嚼して社会のための公共性を持つ活動を行う、その結果ブランド価値の向上につながるという、中長期的なコミットができる企業を増やすことは公共デザインが介入できる場面を増やすことへつながると思いました。

今読んでいるGiles LuryのThe Prisoner and the Penguin: and 75 other marketing storiesで紹介されている話を思い出しました。1992年のロサンゼルス暴動の際に、黒人たちによって街の建物がほぼ壊れたり燃やされたりしたけど、マックドナルドだけは無事だっとという逸話です。マックは普段から地域住民のためにバスケットボールコートを設置したり、朝年寄りに無料でコーヒーを配るなどの活動をしていて、ローカルの黒人たちに「マックは我々の見方」という印象を与えた、その結果暴動でも燃やされなかったという話でした。このように、三方よしとはいっても、企業の社会への貢献は見込める利益のためではなく、コミュニティへの貢献を優先する非ビジネス的(人道的?)観点で踏み切る必要があるのではないかと私は考えていました。アメリカだと企業や個人が富を蓄積すると自発的に吐き出す文化があったりして(例えばビル・ゲイツやウォーレン・バフェットの場合など)そのような考え方が日本に少しずつでも普及できるといいのに、と思いました。

これからの公共デザインは突破しないといけない障壁がたくさんあり大変な道のりであるとは思いますが、企業と公共機関の両方で、より人間を中心において考えて行動する人が増え、その人同士の横連携が強化されることで推進しやすくなると思います。という意味でも有意義な会でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿