Love books, cats, and design. Experienced Korea, Japan and currently based in Hong Kong. Expertised in cross-cultural research and retail experience.
2016年3月20日日曜日
2015年12月15日火曜日
香港のスタートアップ紹介 : Boxful, GoGoVan
今年の9月から、香港に移住しています。東京と同じく大都市なので、生活において何かが大きく変わるといったことはないですが、私が今まで感じた香港の特徴としては、
- Expat(国を出て香港で暮らしている外国人)だらけで、人々がオープンで実用的
- 極端な資本主義社会で、安いものと高いものの差がすごい
- 家賃が非常に高く、住宅事情が良くない
- 狭い地域にお店など密集しているので、何かと便利
といったものがあります。産業としては昔ながら金融まわりや飲食業や観光などのサービス業が進んでいますが、新しいアイデアで勝負を試みるスタートアップの熱気も東京に負けないくらいです。興味深いのは、香港特有の問題の解決に取り組んでいるサービスもいくつかあってある程度成功をおさめているということです。今日は香港らしい、香港発の、注目すべきスタートアップの紹介をしてみたいと思います。
その前に、香港は異常なくらいみんながWhatsAppに依存しているということを話さないといけません。最初の一ヶ月間、サービスアパートメントと言われる、ホテルのようにクリーニングなどのサービスが含まれる契約型のマンションに住んでいましたが、そこでクリーニングを担当している人が、「掃除が必要な日はWhatsAppでメッセージください」というので、とてもびっくりしました。日本だと、LINEで繋がるというのは友達や知り合いが多くて、例えば駅前のクリーニングやさんにLINEでメッセージ入れるという感覚は私にはなかったので、えーこれはなんか変だな、と驚いたものです。
- Expat(国を出て香港で暮らしている外国人)だらけで、人々がオープンで実用的
- 極端な資本主義社会で、安いものと高いものの差がすごい
- 家賃が非常に高く、住宅事情が良くない
- 狭い地域にお店など密集しているので、何かと便利
といったものがあります。産業としては昔ながら金融まわりや飲食業や観光などのサービス業が進んでいますが、新しいアイデアで勝負を試みるスタートアップの熱気も東京に負けないくらいです。興味深いのは、香港特有の問題の解決に取り組んでいるサービスもいくつかあってある程度成功をおさめているということです。今日は香港らしい、香港発の、注目すべきスタートアップの紹介をしてみたいと思います。
すごーく古いビルの隣にすごーく新しいビル
新しいビルでも収益性が低いと判断されたら容赦なく取り壊されます
その前に、香港は異常なくらいみんながWhatsAppに依存しているということを話さないといけません。最初の一ヶ月間、サービスアパートメントと言われる、ホテルのようにクリーニングなどのサービスが含まれる契約型のマンションに住んでいましたが、そこでクリーニングを担当している人が、「掃除が必要な日はWhatsAppでメッセージください」というので、とてもびっくりしました。日本だと、LINEで繋がるというのは友達や知り合いが多くて、例えば駅前のクリーニングやさんにLINEでメッセージ入れるという感覚は私にはなかったので、えーこれはなんか変だな、と驚いたものです。
食べ物のデリバリー頼むのも、引っ越し先探すのも、インターネット会社と連絡するのも、テレビ買うのも、オーブン買うのも、全部WhatsAppで。
WhatsAppは香港では立派なプラットフォームとして成り立っていて、インターネットのサービスがWhatsAppありきでできていることも多々あります。例えば、家電の価格比較サイトの場合、売り手と買い手をマッチングさせて、ポップアップかなんかで「あとはWhatsAppで勝手に連絡しあってください〜」みたいなことになります。それくらいWhatsAppは個人からスモールビジネス、大企業に至るまで、みんなが活用しているということを念頭において、次のサービスについて知ってみると面白いと思います。
1. Boxful
もっとも目立つスタートアップとして、Boxfulというものがあります。家が狭く、家賃が高い香港の住宅事情を踏まえて、当分は要らないものを預かってくれる収納サービスです。もっとも目立つというのは、各種プロモーションが活発に行われていて、地下鉄で宣伝のポスターが貼られていたり、繁華街のど真ん中で着ぐるみがプロモーションを頑張っていたり、あとはタクシーにもBoxfulの広告が貼られていたりします。
Causeway Bayで頑張るBoxfulくん?
私も使ってみました。冬の洋服としばしのお別れ〜。
ネットでボックス持ってきてほしいと申し込むと、指定した日時にデリバリーの人がボックスを持ってきてくれるので、その場で荷物を詰め込めばオッケーです。預けたボックスはネット上で今どんな状況なのか見ることができたり、あと必要に応じて自宅まで持ってきてくれるように申し込んだりすることができます。ボックス一つ預けるのに香港ドル49(およそ770円)がかかり、ボックスに入らないものでも違う値段で預かってくれます。
2015年6月のニュースによると、Boxfulは6.6milアメリカドル(8億円弱)を調達していて、秋や冬にかけて積極的にプロモーション中です。たくさんのユーザーを集めて成功をおさめるのか、それともさまざまな逆境に立ち向かうことになるのかは、これから徐々に明らかになることと思います。
2. GoGoVan
GoGoVanはVanバージョンUberと説明するとわかりやすいと思います。アプリ上で、あれこれ条件をつけてバンを探すと、条件にあったバンが指定した場所まで走ってきてくれるサービスです。Uberよりはいろんな使い方ができると感じていて、例えば荷物が多いときにそれを運ぶためにバンを呼んだり、ちょっとした引っ越しのときに活用したりすることができます。私もいろんな引っ越し会社に問い合わせてみた結果、結局はGoGoVanを使って引っ越しました。GoGoVanもバンを提供する人と、バンを使いたい人を繋げてはくれるんですが、その後の実際の交渉はほとんどWhatsAppで行われます。私の場合、元の家は6階で、エレベーターがなかったので、荷物を階段で運ぶためにいくつかお金を多く払わないといけなくて、その交渉を全てWhatsAppで行いました。
GoGoVanの便利さはどんなわがままな条件を入力しても、それの応じる準備ができている人がたくさんいて、すぐバンで走ってきてくれそうな人と連絡がつくという点です。GoGoVanは2013年にローンチして以来、すでに100milアメリカドル(120億円)以上を調達しています。香港の中ではすでに知れ渡っていて、知人と話してて、「それは重いからさ、GoGoVan呼んで運ぼう」みたいな会話が頻繁に行われるくらいです。GoGoVanは、狭い地域で人口が密集している香港の利点を活かしながら、体系的な配達サービスが存在せず、ものを運ぶことが大変である、という香港の問題を解決しようとしたことで今までは成功をおさめています。
まとめ
香港でのアプリやサービスの使い方や、流行ってるものなどを目の当たりにして、社会やその環境が変わるとウケるアプリやサービスも違うものだな、と「ある社会の実態に特化したサービスを開発することは良い戦略なのか?」「香港の事情にあったこのようなスタートアップが、市場を広げるためにしないといけないことは?」「良いローカライゼーションとは何か?」などについて、いろいろ考えてみるきっかけになりました。
みんなが新しいもの好きで、移り変わりが激しい香港で、どのようなサービスが生き残り、どのようなサービスが淘汰されるのか、これからも興味を持って見守っていきたいと思います。
*UX Tokyo Advent Calendar 2015のためのポストです。
2015年6月17日水曜日
公共のためのデザインの可能性
に参加してきました。
公共のためのデザインに取り組むためには、人間を中心においてモノ・人・社会・環境との関係を見極め、「デザイン」を再定義・再認識しなければならないという話(井口先生)から、デンマークのmind labやワコールの公共性を考えたサービスデザインの紹介(長谷川さん)とソーシャルセンタードデザインのマインドセットやプロセスの話(山崎先生)まで、普段から私もなぜこのような取り組みがもっと行われてないのだろうと思っていたものに対する問題提起が多く、興味深く聞かせていただきました。
ディスカッションで、ビジョンをしっかり決めていない企業が多く、ビジョンをもってそれを実践する形として公共性を実現する必要があるという話には特に強く共感しました。ビジョンっぽいなにか(スローガンとかタグラインのようなもの)をもっている企業は多いけど、それを噛み砕いて実際の公共への貢献を行っている企業は少ないのではないかと私は考えていて、例えば「社会を良くする」とか「女性を幸せにする」みたいなことを表面では言いながら、実際はどうしてもビジネスのことを優先してしまう経営判断が多いと感じていました。
そのような企業を説得する手として「ブランディング」と関連づけて考える(井口先生)アプローチはとても実践的で有効な方法だと思いました。まずはトップがビジョンを描いて、そのビジョンをブランド資産化し、組織の各々がビジョンを咀嚼して社会のための公共性を持つ活動を行う、その結果ブランド価値の向上につながるという、中長期的なコミットができる企業を増やすことは公共デザインが介入できる場面を増やすことへつながると思いました。
今読んでいるGiles LuryのThe Prisoner and the Penguin: and 75 other marketing storiesで紹介されている話を思い出しました。1992年のロサンゼルス暴動の際に、黒人たちによって街の建物がほぼ壊れたり燃やされたりしたけど、マックドナルドだけは無事だっとという逸話です。マックは普段から地域住民のためにバスケットボールコートを設置したり、朝年寄りに無料でコーヒーを配るなどの活動をしていて、ローカルの黒人たちに「マックは我々の見方」という印象を与えた、その結果暴動でも燃やされなかったという話でした。このように、三方よしとはいっても、企業の社会への貢献は見込める利益のためではなく、コミュニティへの貢献を優先する非ビジネス的(人道的?)観点で踏み切る必要があるのではないかと私は考えていました。アメリカだと企業や個人が富を蓄積すると自発的に吐き出す文化があったりして(例えばビル・ゲイツやウォーレン・バフェットの場合など)そのような考え方が日本に少しずつでも普及できるといいのに、と思いました。
これからの公共デザインは突破しないといけない障壁がたくさんあり大変な道のりであるとは思いますが、企業と公共機関の両方で、より人間を中心において考えて行動する人が増え、その人同士の横連携が強化されることで推進しやすくなると思います。という意味でも有意義な会でした。
2015年4月13日月曜日
Yahoo!音声アシストのサービスデザイン
Yahoo! JAPAN Creative Blogに今まで行ってきたサービスデザインの取り組みについて寄稿しました。「サービスデザイン」を私がどのように捉えているか、またEuroIA 2014で持ち帰ったService Design Toolkitの実際のサービスへの適用してみた成果と効果について記しています。
Yahoo!音声アシストのサービスデザイン
Yahoo!音声アシストのサービスデザイン
2015年4月4日土曜日
デザインの裏のデザインの裏のデザイン
ジェイソン・ホブスのエッセイ『デザインの裏のデザインの裏のデザイン』を翻訳しました。元々は2014年サンディエゴで開かれたIA Summitで発表した内容で、それからコンテンツを加えたり整理し、エッセイにまとめたものです。IA(情報アーキテクチャ)は最終的な成果物のブループリントを提供することだけではなく、問題解決環境における総合的ソリューションを提供することで本当の意味を持つという内容で、話を積み上げていく中で社会、アート、建築、映画、ゲーム、産業デザインなどの裏に隠れているいろいろな情報アーキテクチャを明らかにしていてとても面白いです。
ジェイソン・ホブスの紹介文
D3 translated into Japanese
UX and Emerging Technologies
Service Design Salon Vol.7/第17回UXD initiative研究会
「UX and Emerging Technologies」
Dirk Knemeyerさんのお話を聞いてきました。まずはScience fictionがScience factになっているという話。昔「Lost in Space」などで想像していたとんでもない形のロボットたちが、Pepperだとかという形で現実になっている。スタートレックのコミュニケーターもiPhoneという形で実現されていたり。(MotorolaのStarTakが発売したときも、数々のトレッキーの心が躍ったものだと思いますが、実際の世界でより一般的で実用的に使われ始めた例としてはiPhoneが当てはまるかなと思いました)その次にくるテクノロジーはなんだろ?そこに備えて我々UXerたち(にも限らないけど)はこれからどうなっていくのだろう?何をしていけば取り残されないのだろう?という話でした。
印象深い話としては、AI(人工知能)の浮上によってインターフェースが消滅し、UIデザイナーの仕事が奪われてしまうのではないかという話がありました。(スライド21p)私も今音声エージェントのアプリを作っていますが、ボタンを押して話すだけなので複雑なビジュアルデザインが不要なのは確かです。しかしAIがこれよりも飛躍的に発展し、話し手の発話内容を完璧にわかってくれたら、視覚的なインターフェースは消滅するかもしれませんが、今のような過渡期では「これがAIで、人間のような機会だけど人間でもないですよ、また色んな制約がありますよ(あらかじめ定められた定型文から外れた話し方をするとシステムに理解してもらえないなど)」というのをいかにデザインで示すかというのはインタラクション・デザイナーの腕が問われるところだと思いました。なので、この"Threat"はそんなにすぐやってくる訳ではないんじゃないかというのが私の考えです。
新しい技術が次々と現れて、ソフトウェアの開発方法もそれぞれが専門性を持って何かのフェーズを担当するというやり方から、一人、あるいは少人数のチームがアイデアを思いつくところから開発するところまで全部関わるようになる、またAIがUIに入れ替わるという状況で、どのように生存するか?の解として、「特定の市場にて強い専門性を持つこと」「科学や工学の深いところに専門性を持つこと」を提示しています。前者の話は、例えばヘルスケアのスペシャリストになるなどのことが考えられ、後者はものづくりの根幹にある何かの学問を突き詰めるという話です。(特に科学や工学をオススメしていたけど、私にとってはリベラル・アーツを深く探求していかないといけないという問題提起に聞こえました)
プレゼンの内容としては短い方でしたが、鋭い状況の整理、未来にどのような変化が起きるかに対する洞察、またその中で私たち"Creative"たちはどうすればいいかに対する具体的な提案が聞けて非常に良かったし、自分の状況をいろいろ振り返ったりこれからのことを考えるきっかけになりました。
参加者の方々も新しいことを学ぼうという情熱を持った方が多く、いろいろお話を楽しめました。前職の関係者、現職の関係者、大きいIT企業を辞めてスタートアップで頑張っている人などに出会いまるで自分の過去現在未来を一気に旅してきた気分です。(ディケンスの『クリスマス・キャロル』みたいな感じで)また、このような素晴らしいイベントを開催してくださった関係者のみなさんに深く感謝します。特にコンセントさんが開いている数々のイベントを通じて学ぶ機会をたくさんいただくことができてありがたいです。イベントスペースも、食事もとても素敵で楽しい時間を過ごしことができました。
「UX and Emerging Technologies」
Dirk Knemeyerさんのお話を聞いてきました。まずはScience fictionがScience factになっているという話。昔「Lost in Space」などで想像していたとんでもない形のロボットたちが、Pepperだとかという形で現実になっている。スタートレックのコミュニケーターもiPhoneという形で実現されていたり。(MotorolaのStarTakが発売したときも、数々のトレッキーの心が躍ったものだと思いますが、実際の世界でより一般的で実用的に使われ始めた例としてはiPhoneが当てはまるかなと思いました)その次にくるテクノロジーはなんだろ?そこに備えて我々UXerたち(にも限らないけど)はこれからどうなっていくのだろう?何をしていけば取り残されないのだろう?という話でした。
印象深い話としては、AI(人工知能)の浮上によってインターフェースが消滅し、UIデザイナーの仕事が奪われてしまうのではないかという話がありました。(スライド21p)私も今音声エージェントのアプリを作っていますが、ボタンを押して話すだけなので複雑なビジュアルデザインが不要なのは確かです。しかしAIがこれよりも飛躍的に発展し、話し手の発話内容を完璧にわかってくれたら、視覚的なインターフェースは消滅するかもしれませんが、今のような過渡期では「これがAIで、人間のような機会だけど人間でもないですよ、また色んな制約がありますよ(あらかじめ定められた定型文から外れた話し方をするとシステムに理解してもらえないなど)」というのをいかにデザインで示すかというのはインタラクション・デザイナーの腕が問われるところだと思いました。なので、この"Threat"はそんなにすぐやってくる訳ではないんじゃないかというのが私の考えです。
新しい技術が次々と現れて、ソフトウェアの開発方法もそれぞれが専門性を持って何かのフェーズを担当するというやり方から、一人、あるいは少人数のチームがアイデアを思いつくところから開発するところまで全部関わるようになる、またAIがUIに入れ替わるという状況で、どのように生存するか?の解として、「特定の市場にて強い専門性を持つこと」「科学や工学の深いところに専門性を持つこと」を提示しています。前者の話は、例えばヘルスケアのスペシャリストになるなどのことが考えられ、後者はものづくりの根幹にある何かの学問を突き詰めるという話です。(特に科学や工学をオススメしていたけど、私にとってはリベラル・アーツを深く探求していかないといけないという問題提起に聞こえました)
プレゼンの内容としては短い方でしたが、鋭い状況の整理、未来にどのような変化が起きるかに対する洞察、またその中で私たち"Creative"たちはどうすればいいかに対する具体的な提案が聞けて非常に良かったし、自分の状況をいろいろ振り返ったりこれからのことを考えるきっかけになりました。
参加者の方々も新しいことを学ぼうという情熱を持った方が多く、いろいろお話を楽しめました。前職の関係者、現職の関係者、大きいIT企業を辞めてスタートアップで頑張っている人などに出会いまるで自分の過去現在未来を一気に旅してきた気分です。(ディケンスの『クリスマス・キャロル』みたいな感じで)また、このような素晴らしいイベントを開催してくださった関係者のみなさんに深く感謝します。特にコンセントさんが開いている数々のイベントを通じて学ぶ機会をたくさんいただくことができてありがたいです。イベントスペースも、食事もとても素敵で楽しい時間を過ごしことができました。
2015年1月20日火曜日
Lean Startup Update!! 2015
Lean Startup Update!! 2015 (リーンスタートアップをアップデートする会)に参加してきました。
リーンについては、エリック・リースさんのリーン・スタートアップを読んだり、去年Janice Fraserさんのワークショップに参加したりして、その考え方や有効性は理解していました。日本でもLean UX Circleといったものができて、日本企業にもリーンを広めるという活動が行われていることも知っていたので、今回のアップデート会で具体的にどんなことが進行中なのかを知りたいと思い、参加しました。
品川のマイクロソフト本社で行われた今回のイベントは、六つのプレゼンと懇親会で構成されていて、冷蔵庫いっぱいの飲み物(ビールもありました)が自由に飲めたりと、良い雰囲気でした。日本でリーンを広めていこうという趣旨が基になっているからか、参加者同士の交流を重視する雰囲気で、プレゼンも良いけどみなさんぜひつながることでリーンの外圧を作って行きましょうと言われたりしました。私も社内・社外の色んな方にあえて、様々な意見が聞けてよかったです。
日本でのリーンの普及に多大に貢献しているプレゼンターのみなさんのお話も大変有益で、何度も「なるほど、そういう風に考えることもできるんだ!」と思いました。プレゼンのスライドは全てイベントのページに公開されているので、詳細を知りたい方はそちらを参考にすると良いと思います。たくさんの気付きと発見があった六つのセッションの内容を私なりにまとめてみました。
TOCから俯瞰するリーンスタートアップ 河合太郎
TOCというのは「制約条件の理論」とも言う。スコープ全体のボトルネック(制約)がスループット(生産性)を決めるという理論である。この考え方で最適化を行っていくとすると、スコープ内で最も弱い部分(ボトルネック)見つけて、それを強化するという活動を続けていくことになる。リーンという考え方もTOCと重ねて考えることができる。例えば、「何をすればいいかわからない」というボトルネックが見つかったら、リーンキャンバスを書いてみると良い。様々な方法論は課題を解決するための違うアプローチ。TOCやリーンに限らず、色々な見方をしてみると本質をとらえるに役立つだろう。
リーンスタートアップ導入の現場 黒田樹
前回サービスを拡大しようと増員したら、炎上してギズギズになったものを鎮火したという内容の発表をした。今回の発表はその続き。様々なリーンの有名な人と話してみた結果、重要なことは「無駄のない判断をすること」だと思った。無駄のない判断をするためにはMVPという考え方が役に立つ。リソースを投じて検証しなくても、ちょっとした実験でわかることはたくさんある。仮説を立て、アジャイル開発し、結果を分析することを徹底的に回してみた。計画を立てるときは、Build -> Measure -> Learnのサイクルを逆に回す。何を学びたくて?何を検証するといいか?そのためには何を作るか?と言った感じ。これを繰り返していくと、やらないことが最大化したり、グロースハックが定着するといったチームの役割の変化が現れる。
Lean UX Quest in Tokyo 坂田一倫
このセッションで話された内容は坂田さんのブログによくまとまっているので、それを読むと良いと思います。海外のリーンの師匠を招待してリーンを体験してもらうワークショップを開いたり、様々な企業でワークショップを開いてCPS検証・MVP実験を広めたり、Lean UX Circleを立ち上げて実際に企業にリーンを普及させ、その結果を共有する活動をしてきたとのことでした。これからもこのような活動は続くらしいです。
Lean Analytic 角征典
Lean Analyticsの日本語版が1/24発売される。今日はその宣伝も兼ねて、主要KPIを決めたり、データの分析をするときのポイント三つを紹介する。一つ目は、ダメな指標を避けること。自分が知りたいデータばかりを集めても意味がなく、知りたいのは何か?知らないのは何か?を見極める必要がある。やりすぎなくらいコスト削減を強いられる指標や、改善の余地がないKPIを追いかけるのは良くない。二つ目は、ビジネスモデルとステージにあった指標を選ぶこと。ステージについては、まだ定着していないのにむりやり拡散をしようとしても逆効果。最後は、OMTM(最重要指標)だけにフォーカスすること。リソースを集中させ、最も重要な質問の解を得ることができるようになる。
実録!現場におけるLeanStartupの実践 冨山香織
社内でリーンの導入において相談に乗る活動をしている。Lean Startupを導入する背景としては、1. 新規開発 2. 正しいものを作れているのか確認したい 3. 既存の考え方から脱却したいというものがある。新規開発の場合は、企画書を疑い、顧客層を明確することで課題を洗い出した。このときにハマりやすい穴は、効率の悪いピボット(AもBも微妙だからXで行こうぜ!)や、ユーザーよがり(ユーザーが言うことに振り回される)といったものがある。既存の開発に向けては、仮説を立ててそれを検証し続けるような仕組みを可視化して、薦めた。仮説を立てることが難しいという意見もあったが、仮説シートを作って簡潔に作成するようにしてみた。既存の考え方から脱却したい場合の事例は、試行錯誤中。でもボトムアップで勝手にやっちゃうと良いと思う。
人間と話す Lean Customer Development 馬田隆明
スタートアップは失敗する。その最も多い理由は「ニーズがない」ことである。人々のニーズを見つけるためにも、検証するためにも、インタビューが有効。それがLean Customer Development、つまり製品開発の前に顧客とビジネスモデルを検証して、失敗を少なくするための方法論である。Y Combinatorが出資した企業の成功が注目を浴びていて、その社長の信条もやっぱり「人が欲しいと思うものを作れ」である。人が欲しいと思うものを知るためには、きちっと話す必要がある。特に学ぶ、洞察を得る、ビジネスモデルを検証することが重要。「この製品(機能)、いいと思いませんか?」のようなピッチに対してはほとんどの人が同意してしまう。あまり良い聞き方ではない。インタビューのこつは、話すより聞く、オープンな質問をする、事実や具体的なプロセスを聞くといったことがある。「人間と話す」ことは顧客開発の基本。
リーンというのは「ただブランド化されたもの」といった批判もあったりするけど、その本質をきちっと見極めて、適切な場面で手段として使うと少ない費用で大きい成果を導きだすことができると私は考えています。今回の話では、源流はリーンだけど、スコープの捉え方、KPIの設定の仕方、実際のプロジェクトへの導入の失敗談、インタビューのこつなどなど、実際のものづくりに役立つ情報がたくさん得られて良かったし、リーンそのものが正解であり真理である訳ではなく、見通しをよくしてくれる一つのパースペクティブであり、柔軟性を持つアプローチだと考えるとすごく理解しやすかったです。私も自分の業務で、どのようにリーンを組み合わせて導入していくべきか、じっくり一人戦略会議を行う良いきっかけになりました。
これからの活動も楽しみにしています。
リーンについては、エリック・リースさんのリーン・スタートアップを読んだり、去年Janice Fraserさんのワークショップに参加したりして、その考え方や有効性は理解していました。日本でもLean UX Circleといったものができて、日本企業にもリーンを広めるという活動が行われていることも知っていたので、今回のアップデート会で具体的にどんなことが進行中なのかを知りたいと思い、参加しました。
品川のマイクロソフト本社で行われた今回のイベントは、六つのプレゼンと懇親会で構成されていて、冷蔵庫いっぱいの飲み物(ビールもありました)が自由に飲めたりと、良い雰囲気でした。日本でリーンを広めていこうという趣旨が基になっているからか、参加者同士の交流を重視する雰囲気で、プレゼンも良いけどみなさんぜひつながることでリーンの外圧を作って行きましょうと言われたりしました。私も社内・社外の色んな方にあえて、様々な意見が聞けてよかったです。
日本でのリーンの普及に多大に貢献しているプレゼンターのみなさんのお話も大変有益で、何度も「なるほど、そういう風に考えることもできるんだ!」と思いました。プレゼンのスライドは全てイベントのページに公開されているので、詳細を知りたい方はそちらを参考にすると良いと思います。たくさんの気付きと発見があった六つのセッションの内容を私なりにまとめてみました。
TOCから俯瞰するリーンスタートアップ 河合太郎
TOCというのは「制約条件の理論」とも言う。スコープ全体のボトルネック(制約)がスループット(生産性)を決めるという理論である。この考え方で最適化を行っていくとすると、スコープ内で最も弱い部分(ボトルネック)見つけて、それを強化するという活動を続けていくことになる。リーンという考え方もTOCと重ねて考えることができる。例えば、「何をすればいいかわからない」というボトルネックが見つかったら、リーンキャンバスを書いてみると良い。様々な方法論は課題を解決するための違うアプローチ。TOCやリーンに限らず、色々な見方をしてみると本質をとらえるに役立つだろう。
リーンスタートアップ導入の現場 黒田樹
前回サービスを拡大しようと増員したら、炎上してギズギズになったものを鎮火したという内容の発表をした。今回の発表はその続き。様々なリーンの有名な人と話してみた結果、重要なことは「無駄のない判断をすること」だと思った。無駄のない判断をするためにはMVPという考え方が役に立つ。リソースを投じて検証しなくても、ちょっとした実験でわかることはたくさんある。仮説を立て、アジャイル開発し、結果を分析することを徹底的に回してみた。計画を立てるときは、Build -> Measure -> Learnのサイクルを逆に回す。何を学びたくて?何を検証するといいか?そのためには何を作るか?と言った感じ。これを繰り返していくと、やらないことが最大化したり、グロースハックが定着するといったチームの役割の変化が現れる。
Lean UX Quest in Tokyo 坂田一倫
このセッションで話された内容は坂田さんのブログによくまとまっているので、それを読むと良いと思います。海外のリーンの師匠を招待してリーンを体験してもらうワークショップを開いたり、様々な企業でワークショップを開いてCPS検証・MVP実験を広めたり、Lean UX Circleを立ち上げて実際に企業にリーンを普及させ、その結果を共有する活動をしてきたとのことでした。これからもこのような活動は続くらしいです。
Lean Analytic 角征典
Lean Analyticsの日本語版が1/24発売される。今日はその宣伝も兼ねて、主要KPIを決めたり、データの分析をするときのポイント三つを紹介する。一つ目は、ダメな指標を避けること。自分が知りたいデータばかりを集めても意味がなく、知りたいのは何か?知らないのは何か?を見極める必要がある。やりすぎなくらいコスト削減を強いられる指標や、改善の余地がないKPIを追いかけるのは良くない。二つ目は、ビジネスモデルとステージにあった指標を選ぶこと。ステージについては、まだ定着していないのにむりやり拡散をしようとしても逆効果。最後は、OMTM(最重要指標)だけにフォーカスすること。リソースを集中させ、最も重要な質問の解を得ることができるようになる。
実録!現場におけるLeanStartupの実践 冨山香織
社内でリーンの導入において相談に乗る活動をしている。Lean Startupを導入する背景としては、1. 新規開発 2. 正しいものを作れているのか確認したい 3. 既存の考え方から脱却したいというものがある。新規開発の場合は、企画書を疑い、顧客層を明確することで課題を洗い出した。このときにハマりやすい穴は、効率の悪いピボット(AもBも微妙だからXで行こうぜ!)や、ユーザーよがり(ユーザーが言うことに振り回される)といったものがある。既存の開発に向けては、仮説を立ててそれを検証し続けるような仕組みを可視化して、薦めた。仮説を立てることが難しいという意見もあったが、仮説シートを作って簡潔に作成するようにしてみた。既存の考え方から脱却したい場合の事例は、試行錯誤中。でもボトムアップで勝手にやっちゃうと良いと思う。
人間と話す Lean Customer Development 馬田隆明
スタートアップは失敗する。その最も多い理由は「ニーズがない」ことである。人々のニーズを見つけるためにも、検証するためにも、インタビューが有効。それがLean Customer Development、つまり製品開発の前に顧客とビジネスモデルを検証して、失敗を少なくするための方法論である。Y Combinatorが出資した企業の成功が注目を浴びていて、その社長の信条もやっぱり「人が欲しいと思うものを作れ」である。人が欲しいと思うものを知るためには、きちっと話す必要がある。特に学ぶ、洞察を得る、ビジネスモデルを検証することが重要。「この製品(機能)、いいと思いませんか?」のようなピッチに対してはほとんどの人が同意してしまう。あまり良い聞き方ではない。インタビューのこつは、話すより聞く、オープンな質問をする、事実や具体的なプロセスを聞くといったことがある。「人間と話す」ことは顧客開発の基本。
リーンというのは「ただブランド化されたもの」といった批判もあったりするけど、その本質をきちっと見極めて、適切な場面で手段として使うと少ない費用で大きい成果を導きだすことができると私は考えています。今回の話では、源流はリーンだけど、スコープの捉え方、KPIの設定の仕方、実際のプロジェクトへの導入の失敗談、インタビューのこつなどなど、実際のものづくりに役立つ情報がたくさん得られて良かったし、リーンそのものが正解であり真理である訳ではなく、見通しをよくしてくれる一つのパースペクティブであり、柔軟性を持つアプローチだと考えるとすごく理解しやすかったです。私も自分の業務で、どのようにリーンを組み合わせて導入していくべきか、じっくり一人戦略会議を行う良いきっかけになりました。
これからの活動も楽しみにしています。
2015年1月17日土曜日
TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則
TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則
を読みました。
本の中には人に薦めたくなる本もあれば、中身が有益すぎてあまり人に教えないで自分だけの秘密にしておきたい、そんな本もあります。この本は絶対に後者でした。が、あまりケチなことを言ってないで良いものはどんどんオープンにすべきと思ったのでこのポストを書くことにしました。TEDのモットーは「Ideas worth spreading」としているけれど、そのTEDを題材にした本書もまた「広げる価値のある」良書でした。
この本はTEDの名プレゼンを分析して、その共通点を9つにまとめています。その中には、そんなの当たり前じゃんとも思えるけど「法則」として規定することによってもう一度よく考えるきっかけを与えてくれるものもあれば、普段まったくそういう風に考えたこともなかったなぁという新しい気付きを与えてくれるものもありました。9つの法則というのは、簡単にまとめると1. 自分が好きで情熱を持っているものを 2. ストーリーで伝え 3. 事前の練習でたくさんのフィードバックを得て 4. 人々が知らなかった新しい話をして 5. 感情に触れるびっくりの瞬間を作り 6. 適切なユーモアを駆使し 7. 短い時間で要点を伝え 8. 五感に訴え 9. 自分らしく生きるということでした。どの法則の話でも実際のTEDの例をあげて説明していたので、途中でネットでTEDを見ながら読み進めることができたので楽しかったです。
ストーリーを提示する、五感に訴える、といったどちらかというとテクニックに近いものも勉強になったし、自分もやってみようと思いましたが、自分が好きなものに熱中していて、自分らしく、自分が発信したい話をすることで、観客はその真実味を感じてくれるという話が特に心にしみました。振り返ってみると、今まで聞いてきて心躍ったプレゼンは全て話し手が自分が好きな話をしていたんだなということに気がつきました。こんな当然なことをなぜ今まで考えたこともなかったんだろ?また、パームスプリングズに行ったときに、Jonah Lehrerが「書くことに対する愛」を語っていて感動したことも思い出しました。人に良い影響を与える人はみんな、自分が何かに情熱を持って真摯に取り組んでいるということに気がついて良かったし、私も今好きな仕事をしているので、もっともっと好きで面白いことをたくさんして、それでまわりに影響を与えていけるといいなと思いました。
この本であげている上手いプレゼンはどれも面白かったですが、個人的に最も熱中して見てしまったのは、マルコム・グラッドウェルのパスタソースの話でした。私の仕事とも関係するところがあり、人々は自分が欲しがっているものをわかっていない、という単純な事実をとても面白い実例を用いて話をしてくれます。日本語字幕版はこちらから見ることができます。
本の中には人に薦めたくなる本もあれば、中身が有益すぎてあまり人に教えないで自分だけの秘密にしておきたい、そんな本もあります。この本は絶対に後者でした。が、あまりケチなことを言ってないで良いものはどんどんオープンにすべきと思ったのでこのポストを書くことにしました。TEDのモットーは「Ideas worth spreading」としているけれど、そのTEDを題材にした本書もまた「広げる価値のある」良書でした。
この本はTEDの名プレゼンを分析して、その共通点を9つにまとめています。その中には、そんなの当たり前じゃんとも思えるけど「法則」として規定することによってもう一度よく考えるきっかけを与えてくれるものもあれば、普段まったくそういう風に考えたこともなかったなぁという新しい気付きを与えてくれるものもありました。9つの法則というのは、簡単にまとめると1. 自分が好きで情熱を持っているものを 2. ストーリーで伝え 3. 事前の練習でたくさんのフィードバックを得て 4. 人々が知らなかった新しい話をして 5. 感情に触れるびっくりの瞬間を作り 6. 適切なユーモアを駆使し 7. 短い時間で要点を伝え 8. 五感に訴え 9. 自分らしく生きるということでした。どの法則の話でも実際のTEDの例をあげて説明していたので、途中でネットでTEDを見ながら読み進めることができたので楽しかったです。
ストーリーを提示する、五感に訴える、といったどちらかというとテクニックに近いものも勉強になったし、自分もやってみようと思いましたが、自分が好きなものに熱中していて、自分らしく、自分が発信したい話をすることで、観客はその真実味を感じてくれるという話が特に心にしみました。振り返ってみると、今まで聞いてきて心躍ったプレゼンは全て話し手が自分が好きな話をしていたんだなということに気がつきました。こんな当然なことをなぜ今まで考えたこともなかったんだろ?また、パームスプリングズに行ったときに、Jonah Lehrerが「書くことに対する愛」を語っていて感動したことも思い出しました。人に良い影響を与える人はみんな、自分が何かに情熱を持って真摯に取り組んでいるということに気がついて良かったし、私も今好きな仕事をしているので、もっともっと好きで面白いことをたくさんして、それでまわりに影響を与えていけるといいなと思いました。
この本であげている上手いプレゼンはどれも面白かったですが、個人的に最も熱中して見てしまったのは、マルコム・グラッドウェルのパスタソースの話でした。私の仕事とも関係するところがあり、人々は自分が欲しがっているものをわかっていない、という単純な事実をとても面白い実例を用いて話をしてくれます。日本語字幕版はこちらから見ることができます。
2015年1月10日土曜日
Lean UX ーリーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン
Lean UX ―リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン (THE LEAN SERIES)
を読みました。
青いリーン(エリック・リースのリーン・スタートアップ)を読んで、学べるものがとても多かったので、リーン・スタートアップの考え方とUXデザインを合わせるとどうなるんだろうというのが気になって購入してみました。感想としては、青いリーンは新しい発見が多く、ものづくりに対する考え方が私の中で劇的に変わったきっかけになりましたが、白いリーンはどちらかというと既にわかっていたものの再確認が多かったです。自分が成長したのか、本書の特徴がそうなのかはよくわかりませんが、個人的には新しいものを学んだというよりは現状の振り返りに大いに役立ちました。
現状を振り返る上で最も参考になったのが、3つの基盤と15の方針でした。3つの基盤というのはデザイン思考、アジャイル開発、リーン・スタートアップの三つです。15の方針としてはチームのありか(横断的、小規模、課題重点型、共通理解を持つ)から、プロセスの進め方(無駄を取り除く、バッチサイズを小さく、仕事の外面化、分析より形にする、中間生成物中心からの脱却)やマインドセット(失敗を許容する、ヒーローじゃなくてみんなでやる、アウトプットよりアウトカム、ビルから出る)まで、リーンを実行する上の様々な基準が定義されていました。この15の方針に現状のチームやプロセスを照らし合わせてみて、満たされていない項目を少しずつ改善していくのが、ユーザーの声をいち早く取り入れられる良い仕組み構築につながると思いました。
プロセス編はかなり細かく、具体的なワークシートなども用意されていて、課題ステートメントをどのように作成すると良いかとか、デザインスタジオをどのように進めると良いか(配る紙のサイズまで指定していたのには驚いた)、スタイルガイドをどう作ると良いかなどが書かれています。また、様々な種類のMVP(充実度が底〜高のプロトタイプやメールやランディング・ページのような非プロトタイプ)が紹介されていたり、リクルートやスケジューリングを含む定性調査の仕方が紹介されています。チームやプロジェクトには各々のコンテキストがあると思うので、ここに書かれているものを全て実行すればいいという話ではなく、この中で現状に最もフィットしていて、現状の課題を解決してくれるものをいくつか選んで賢く使っていくと良いと思いました。
実践編ではLean UXの実現(主に、頻繁なユーザーインタビューからのフィードバックをどのように取り入れるか)をアジャイル開発にどのように組み合わせていくと良いかの提案が書かれています。失敗例として、スタッガード・スプリントモデルが紹介されていて、このモデルだとデザイナーが作ったものを開発者に流すやり方になってしまうので、コラボレーティブなチーム作りができないことが問題だと指摘しています。本書は各イテレーションに一つのテーマを設定して、みんなで計画・実行・評価することでより優れたチームを築くやり方を薦めています。
通して、この本で得られた大切な気づきとしては「アウトプットではなくアウトカム」「コラボレーティブ・デザイン」の二つです。日頃から何かドキュメントを書かないとアウトプットを出してないような後ろめたさのようなものがありましたが、この本を読んでドキュメントを書くのにかかる時間をもっとアクティブ・ユーザーが増えたとかユーザーの満足度が高くなったといった実際の成果(アウトカム)を導くために投資しようと思うようになりました。また、デザイナーとして、イメージファイルのようなアウトプットを出すことよりも、チームのみんながクリエイティブにアイディアを出し合う環境を作るためのファシリテーション、つまりチームやプロセス、環境のデザインにより力を入れていこうと思いました。
を読みました。
青いリーン(エリック・リースのリーン・スタートアップ)を読んで、学べるものがとても多かったので、リーン・スタートアップの考え方とUXデザインを合わせるとどうなるんだろうというのが気になって購入してみました。感想としては、青いリーンは新しい発見が多く、ものづくりに対する考え方が私の中で劇的に変わったきっかけになりましたが、白いリーンはどちらかというと既にわかっていたものの再確認が多かったです。自分が成長したのか、本書の特徴がそうなのかはよくわかりませんが、個人的には新しいものを学んだというよりは現状の振り返りに大いに役立ちました。
現状を振り返る上で最も参考になったのが、3つの基盤と15の方針でした。3つの基盤というのはデザイン思考、アジャイル開発、リーン・スタートアップの三つです。15の方針としてはチームのありか(横断的、小規模、課題重点型、共通理解を持つ)から、プロセスの進め方(無駄を取り除く、バッチサイズを小さく、仕事の外面化、分析より形にする、中間生成物中心からの脱却)やマインドセット(失敗を許容する、ヒーローじゃなくてみんなでやる、アウトプットよりアウトカム、ビルから出る)まで、リーンを実行する上の様々な基準が定義されていました。この15の方針に現状のチームやプロセスを照らし合わせてみて、満たされていない項目を少しずつ改善していくのが、ユーザーの声をいち早く取り入れられる良い仕組み構築につながると思いました。
プロセス編はかなり細かく、具体的なワークシートなども用意されていて、課題ステートメントをどのように作成すると良いかとか、デザインスタジオをどのように進めると良いか(配る紙のサイズまで指定していたのには驚いた)、スタイルガイドをどう作ると良いかなどが書かれています。また、様々な種類のMVP(充実度が底〜高のプロトタイプやメールやランディング・ページのような非プロトタイプ)が紹介されていたり、リクルートやスケジューリングを含む定性調査の仕方が紹介されています。チームやプロジェクトには各々のコンテキストがあると思うので、ここに書かれているものを全て実行すればいいという話ではなく、この中で現状に最もフィットしていて、現状の課題を解決してくれるものをいくつか選んで賢く使っていくと良いと思いました。
実践編ではLean UXの実現(主に、頻繁なユーザーインタビューからのフィードバックをどのように取り入れるか)をアジャイル開発にどのように組み合わせていくと良いかの提案が書かれています。失敗例として、スタッガード・スプリントモデルが紹介されていて、このモデルだとデザイナーが作ったものを開発者に流すやり方になってしまうので、コラボレーティブなチーム作りができないことが問題だと指摘しています。本書は各イテレーションに一つのテーマを設定して、みんなで計画・実行・評価することでより優れたチームを築くやり方を薦めています。
通して、この本で得られた大切な気づきとしては「アウトプットではなくアウトカム」「コラボレーティブ・デザイン」の二つです。日頃から何かドキュメントを書かないとアウトプットを出してないような後ろめたさのようなものがありましたが、この本を読んでドキュメントを書くのにかかる時間をもっとアクティブ・ユーザーが増えたとかユーザーの満足度が高くなったといった実際の成果(アウトカム)を導くために投資しようと思うようになりました。また、デザイナーとして、イメージファイルのようなアウトプットを出すことよりも、チームのみんながクリエイティブにアイディアを出し合う環境を作るためのファシリテーション、つまりチームやプロセス、環境のデザインにより力を入れていこうと思いました。
2014年12月10日水曜日
ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 winter
ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 winterに参加してきました。今回のイベントは『ユーザーエクスペリエンスの測定ーUXメトリクスの理論と実践』の発売記念も兼ねていて、著者のビル・アルバートさんが本の内容だとか、ベントリー大学でUXセンターの実行ディレクターとして様々な会社の依頼を受けてきた経験談などを二日間集中的に話してくれました。
ベントリー大学では16週にかけてUXメトリクスについて講義をしているとのことでしたが、今回は二日しかなく、詳しい話が聞けなかったことは残念なので、詳細は書籍を読んでみて突き詰めて勉強をしようと思いました。UXメトリクスとはなにか?なぜUX向上において重要なのか?組織に導入するためにはどうすれば良いか?といった話がメインで、ケーススタディの中では今すぐはじめようと思えるような実績的な内容もたくさん含まれていました。
二日間、六つのセッションの内容をまとめてみました。
UXメトリクス入門 – ユーザーエクスペリエンスの測定とは?
UXメトリクス(測定の基準)を持つことによって、問題に着目したり、回避したり、問題の大きさをはかったり、競合との差別化をはかったり、改善の記録をつけたり、マネジメントを説得することができる。例えば、タスクの成功率、タスク完了時間、離脱、満足度の度合い、使いやすさの度合いのような測定に関わるもの(従属変数)と、ユーザーの年齢、性別、プロダクトのデザイン、使用頻度のような操作に関わるもの(独立変数)があって、それらを組み合わせて使うことによって、知りたいことに対する答えを得ることができる。自分にあったUXメトリクスを設計するためには、何を知りたいのか、得た情報をどうするつもりなのかを明確しておくことが重要で、UXメトリクスは決まった形がある訳ではなく、自分で組み立てるレゴのようなものである。
UXメトリクスの現状 – 欧米のUXメトリクスの最新動向
UXメトリクスに取り組んだ理由は、90年代のUXのメソッドはもっとゆるかったし、声が大きい人の意見が通りがちだったので、スタンダードな手法を確立することによって、UXをより尊敬される分野にしたかったから。また、実際多くのケースを見て聞いて、色んなところの独自のメトリクスの工夫を見てインスパイアされた。2008年に出版したこの本は今まで売れ行きが落ちたことがなく、ステディーに売れ続けている。みんなが測定可能な基準を必要としている証拠だと思う。
トレンドとしては、まずUXメトリクスに対する専門性を持つ人がまずいないのに、企業としてはUXで差別化をはかろうとするため、人が足りない状況。ベントリー大学の生徒たちもいくつもの内定をもらっている。また、Emotional engagement(感情的なつながり)を調べようとする企業も増えている。どれだけ愛着を持ってくれて、家族や友達に紹介しようとするかどうかなど。中国に行ったときに、UXに対する情熱にびっくりした。今までなかった文化なので、早く学ぼうとしてみんな熱心。
UXメトリクス・ケーススタディ – UXメトリクスをどのように活用するか?
9つのケーススタディの紹介。ユーザビリティベンチマーク、ベースライン評価、情報アーキテクチャ、ブランド認知、ローカライゼーション、マイクロインタラクション、エラーと学習可能性、比較評価、アイトラッキングと広告の事例。どれも知りたいことを明確にして、それを知るための指標を設定し、測定結果をもって次のアクションにつなげることができた例。ベンチマークの例では、3つの競合製品を含めた4つの製品をメジャーの上に「使いやすい順で並べてください」というタスクを出して、その距離を指標として使用した。こうすることでユーザーの心理的な満足度を測定可能な定量データにすることができた。
UXメトリクスの実践 – ユーザーエクスペリエンス測定のための秘訣
クエスチョンの定義→計画→データ収集→分析→結果の提示のプロセスをまわす。リサーチクエスチョンは、何を知りたいのか?どうしてこれを知る必要があるのか?といった、リサーチの目的をはっきりとしたもの。それが決まったら、質問に答えられる手法を選ぶ。例えば、ユーザーがウェブサイトでなぜ悪戦苦闘するのかを知るためには、定性調査が有効である。しかし、どのような色がいいか?といったものは定量調査が向いている。それから、モデレーションありなしを選ぶ。モデレーションありの方がたくさんの洞察が得られるが、なしの方がサンプルサイズが大きく、データ収集が早い。計画が終わったらデータを収集し、分析を行う。分析時はアウトライナーを特定して除く、最小値を除く、平均値ではなく中央値をレポートするなどの工夫をする。最後はデータを統合し、「UXスコア」を算出すると比較の際に役立つ。
UX戦略としてのUXメトリクス – UX活動を推進するためのドライバー
日本でもUXが脚光を浴びている。UXが求められる背景として、「製品からサービスへのシフト」「社会インフラのスマート化」「競争化・グローバル化における経営戦略の要請」といったものがある。効果的なUX戦略を分解すると、リーダーシップ、メソッド、メトリクス、マネジメントになる。組織の中でUXを普及させるためのマネジメント、工程にあったUXメソッドの実施、組織の大きさや目的にあったリーダーシップとともに、メトリクスが重要になる。「測れないものは管理できない」というドラッカーの言葉のように、測ることは組織化活動の要である。UXメトリクスをUX戦略推進のドライバーとして、ユーザー視点のKPI、マーケティング視点KPI、業務プロセス視点KPIなどを設定して、達成のためにPDCAを回すべきである。
UXメトリクスの応用 – UXメトリクスの組織への適用方法
UXの分野は急成長中で、人が足りない。現在UXの仕事をしている人たちの背景はデザイナーから歴史を専攻した人まで、多様であり教育レベルも高い。組織としては、UXのことを意識していないところもあれば、根付いているところもあって、それを「UX成熟度モデル」で表すこともできる。UXを推進するためには、組織的なサポートが必要で、定性・定量的手法の経験のあるUXチームを作ることが重要。UXメトリクスを実施するためには、小さくスタートして拡大していくやり方をオススメする。まずはゴールやKPI、配役と責任、予算といったプロジェクトの定義を行い、計画にあう手法を選んで実施する。発見をしたいのか、デザインの評価(形成的評価)をしたいのか、検証(総合的評価)をしたいのかによって、手法は違ってくる。手法を選んでデータを収集したら、それを分析して、マネジメントに説明するところまでが一つのサイクル。
「UXメトリクス」というと、なにかと専門知識が必要だったりお金がかかったり時間がかかりそうというイメージが強かったけど、UXを測定するという考え方は特に大げさなことではなく、「仮説を立てる→検証する→改善する」というユーザー中心のデザインプロセスにおいて必ず必要になるものであることを再確認しました。ログなどお金や時間をかけなくても自然と集まる大量のデータをいかに分析して次に活かすかを明確にするためには、UXメトリクスを設定して活用することが不可欠と感じました。
私の日頃の業務で、例えばデザインの細かなところでチームの意見がわかれた場合、「恐らくこうだろう」という意見ベースでしか話が進まなくなるので、そのときに「誰に見られて」「どのように使ってもらいたいのか」を明確にして、そのような人たちを対象に小規模でもいいのでアンケートを実施して、判断の根拠となる定量データを確保するというアプローチは今すぐにでも使えるものだと思いました。
また、聞いているときはとても概要的な内容だと感じていたのですが、こうやってブログにしてまとめていると、概要だけでもかなり盛りだくさんだなぁと思えてきたのとともに、これらの内容は本当に概要にすぎないので、実践するためにはより深く勉強をしないといけないなと思いました。UXをただ勘で進めるのではなく、きちっとしたロジックで根拠を残しながら進めるための、とても有益な話を聞かせていただくことができて、スピーカーのビルさんと篠原さん、主催のソシオメディアさま、またこのイベントを紹介してくださった方に感謝します。
ベントリー大学では16週にかけてUXメトリクスについて講義をしているとのことでしたが、今回は二日しかなく、詳しい話が聞けなかったことは残念なので、詳細は書籍を読んでみて突き詰めて勉強をしようと思いました。UXメトリクスとはなにか?なぜUX向上において重要なのか?組織に導入するためにはどうすれば良いか?といった話がメインで、ケーススタディの中では今すぐはじめようと思えるような実績的な内容もたくさん含まれていました。
二日間、六つのセッションの内容をまとめてみました。
UXメトリクス入門 – ユーザーエクスペリエンスの測定とは?
UXメトリクス(測定の基準)を持つことによって、問題に着目したり、回避したり、問題の大きさをはかったり、競合との差別化をはかったり、改善の記録をつけたり、マネジメントを説得することができる。例えば、タスクの成功率、タスク完了時間、離脱、満足度の度合い、使いやすさの度合いのような測定に関わるもの(従属変数)と、ユーザーの年齢、性別、プロダクトのデザイン、使用頻度のような操作に関わるもの(独立変数)があって、それらを組み合わせて使うことによって、知りたいことに対する答えを得ることができる。自分にあったUXメトリクスを設計するためには、何を知りたいのか、得た情報をどうするつもりなのかを明確しておくことが重要で、UXメトリクスは決まった形がある訳ではなく、自分で組み立てるレゴのようなものである。
UXメトリクスの現状 – 欧米のUXメトリクスの最新動向
UXメトリクスに取り組んだ理由は、90年代のUXのメソッドはもっとゆるかったし、声が大きい人の意見が通りがちだったので、スタンダードな手法を確立することによって、UXをより尊敬される分野にしたかったから。また、実際多くのケースを見て聞いて、色んなところの独自のメトリクスの工夫を見てインスパイアされた。2008年に出版したこの本は今まで売れ行きが落ちたことがなく、ステディーに売れ続けている。みんなが測定可能な基準を必要としている証拠だと思う。
トレンドとしては、まずUXメトリクスに対する専門性を持つ人がまずいないのに、企業としてはUXで差別化をはかろうとするため、人が足りない状況。ベントリー大学の生徒たちもいくつもの内定をもらっている。また、Emotional engagement(感情的なつながり)を調べようとする企業も増えている。どれだけ愛着を持ってくれて、家族や友達に紹介しようとするかどうかなど。中国に行ったときに、UXに対する情熱にびっくりした。今までなかった文化なので、早く学ぼうとしてみんな熱心。
UXメトリクス・ケーススタディ – UXメトリクスをどのように活用するか?
9つのケーススタディの紹介。ユーザビリティベンチマーク、ベースライン評価、情報アーキテクチャ、ブランド認知、ローカライゼーション、マイクロインタラクション、エラーと学習可能性、比較評価、アイトラッキングと広告の事例。どれも知りたいことを明確にして、それを知るための指標を設定し、測定結果をもって次のアクションにつなげることができた例。ベンチマークの例では、3つの競合製品を含めた4つの製品をメジャーの上に「使いやすい順で並べてください」というタスクを出して、その距離を指標として使用した。こうすることでユーザーの心理的な満足度を測定可能な定量データにすることができた。
UXメトリクスの実践 – ユーザーエクスペリエンス測定のための秘訣
クエスチョンの定義→計画→データ収集→分析→結果の提示のプロセスをまわす。リサーチクエスチョンは、何を知りたいのか?どうしてこれを知る必要があるのか?といった、リサーチの目的をはっきりとしたもの。それが決まったら、質問に答えられる手法を選ぶ。例えば、ユーザーがウェブサイトでなぜ悪戦苦闘するのかを知るためには、定性調査が有効である。しかし、どのような色がいいか?といったものは定量調査が向いている。それから、モデレーションありなしを選ぶ。モデレーションありの方がたくさんの洞察が得られるが、なしの方がサンプルサイズが大きく、データ収集が早い。計画が終わったらデータを収集し、分析を行う。分析時はアウトライナーを特定して除く、最小値を除く、平均値ではなく中央値をレポートするなどの工夫をする。最後はデータを統合し、「UXスコア」を算出すると比較の際に役立つ。
UX戦略としてのUXメトリクス – UX活動を推進するためのドライバー
日本でもUXが脚光を浴びている。UXが求められる背景として、「製品からサービスへのシフト」「社会インフラのスマート化」「競争化・グローバル化における経営戦略の要請」といったものがある。効果的なUX戦略を分解すると、リーダーシップ、メソッド、メトリクス、マネジメントになる。組織の中でUXを普及させるためのマネジメント、工程にあったUXメソッドの実施、組織の大きさや目的にあったリーダーシップとともに、メトリクスが重要になる。「測れないものは管理できない」というドラッカーの言葉のように、測ることは組織化活動の要である。UXメトリクスをUX戦略推進のドライバーとして、ユーザー視点のKPI、マーケティング視点KPI、業務プロセス視点KPIなどを設定して、達成のためにPDCAを回すべきである。
UXメトリクスの応用 – UXメトリクスの組織への適用方法
UXの分野は急成長中で、人が足りない。現在UXの仕事をしている人たちの背景はデザイナーから歴史を専攻した人まで、多様であり教育レベルも高い。組織としては、UXのことを意識していないところもあれば、根付いているところもあって、それを「UX成熟度モデル」で表すこともできる。UXを推進するためには、組織的なサポートが必要で、定性・定量的手法の経験のあるUXチームを作ることが重要。UXメトリクスを実施するためには、小さくスタートして拡大していくやり方をオススメする。まずはゴールやKPI、配役と責任、予算といったプロジェクトの定義を行い、計画にあう手法を選んで実施する。発見をしたいのか、デザインの評価(形成的評価)をしたいのか、検証(総合的評価)をしたいのかによって、手法は違ってくる。手法を選んでデータを収集したら、それを分析して、マネジメントに説明するところまでが一つのサイクル。
「UXメトリクス」というと、なにかと専門知識が必要だったりお金がかかったり時間がかかりそうというイメージが強かったけど、UXを測定するという考え方は特に大げさなことではなく、「仮説を立てる→検証する→改善する」というユーザー中心のデザインプロセスにおいて必ず必要になるものであることを再確認しました。ログなどお金や時間をかけなくても自然と集まる大量のデータをいかに分析して次に活かすかを明確にするためには、UXメトリクスを設定して活用することが不可欠と感じました。
私の日頃の業務で、例えばデザインの細かなところでチームの意見がわかれた場合、「恐らくこうだろう」という意見ベースでしか話が進まなくなるので、そのときに「誰に見られて」「どのように使ってもらいたいのか」を明確にして、そのような人たちを対象に小規模でもいいのでアンケートを実施して、判断の根拠となる定量データを確保するというアプローチは今すぐにでも使えるものだと思いました。
また、聞いているときはとても概要的な内容だと感じていたのですが、こうやってブログにしてまとめていると、概要だけでもかなり盛りだくさんだなぁと思えてきたのとともに、これらの内容は本当に概要にすぎないので、実践するためにはより深く勉強をしないといけないなと思いました。UXをただ勘で進めるのではなく、きちっとしたロジックで根拠を残しながら進めるための、とても有益な話を聞かせていただくことができて、スピーカーのビルさんと篠原さん、主催のソシオメディアさま、またこのイベントを紹介してくださった方に感謝します。
2014年12月9日火曜日
EuroIA 2014 で思ったこと色々
これは、【UX Tokyo Advent Calendar】のために書いたものです。(12/9)
ヨーロッパ最大のIA/UXカンファレンス、EuroIA 2014に参加してきました。今年は開催10周年ということで、1回目の開催地だったベルギーのブリュッセルで、9月25日から27日までの三日間にかけて行われました。形式としては午前中はワークショップ、午後はプレゼン、合間にみんなで食べたり飲んだりして交流するという形でした。私が参加した三つのワークショップの中、二つのワークショップの内容についてはその詳細を会社のブログに寄稿していますので、今日は「飲んだり食べたり」の時間に見たこと思ったこと感じたことを共有してみようと思います。
1. ベルギーは地理的にフランスやドイツ、オランダに接していて、話す言葉もバラバラです。私は会場から徒歩3分のところに泊まっていて、主な観光地も徒歩10分以内に密集していてあまり遠くへ行くことがなかったのですが、それでもあの小さい地域の中でフランス語やドイツ語、オランダ語や英語が飛び交っていて非常に興味深かったです。中には4カ国語を流暢に話す人も多く、相手がフランス語は話せないけどドイツ語はいけるということがわかった瞬間にドイツ語モードに変えて話すなどしていてすごいと思いました。
EuroIAの会場には求人の紙が貼られていましたが、スキルの一つとして「ドイツ語とフランス語、オランダ語がビジネスレベル以上」という条件があったり。ベルギーの人たちとスタートアップ文化について話していると、彼らにとってローカライズはとてもやっかいだけどクリアしないといけない大きい課題らしいです。日本は日本語がわかる人がほとんどなので、日本語に対応しておけば1億以上の人に理解してもらえることが保証されますが、ヨーロッパの場合、例えばフランス語で対応しても母数が全然少ないのでビジネスとして成り立たず、サービスの成長のためには必ず他言語対応をしないといけないそうです。このようなヨーロッパ独特の事情が聞けて良かったです。
2. 東京のことを「なんだか未来都市なイメージ」と言っていた人が多くて面白かったです。彼らの頭の中にはモノレールが走っているとか、スカイツリーが光っているとか、タッチして自動販売機から飲み物を買うといったものが東京のイメージをなしているのかもしれません。ヨーロッパは大都市でも古い建物がずっと昔から残っていて、そのような環境で暮らしていると、「東京」はSF映画に出てきそうな未来都市のように思えるのかもしれません。何かに対するイメージというものは相対的なものなんだなーということをあらかじめ考える良いきっかけになりました。
この絵はなにごとも相対的なんだなぁと感じたもう一つの例です。これは現地で仲良くなった人が描いてくれた、EuroIAで出会った人たちの似顔絵です。左上に登場しているのが私で、空き時間にひたすらテレビを見ていることや、猫を飼っていることは自分で言ったので、「TV GIRL」というあだなをつけられたり、まわりを猫を描かれたりしたのは単に面白いと思っただけですが、白人から見たアジア人の顔って、やっぱりああなっちゃうんだな、というのが軽い衝撃だったです。アジア人同士で似顔絵を書くと、絶対あんな顔にはならないはずで、私自身も自分の目があんなに細くて、鼻があんなに低いとは思ったことがないのです(笑)
3. 10年間ずっと参加しているという人も多かったので、「昔この会はどうだった?」という質問をたくさんしてみました。共通したものとして、「昔はもっとどうすればいいかわからず悩んでいた」「世間に理解してもらえなくて集団でいじけていた」といったものが多かったです。また、ウェブの時代はよりヒューリスティック調査のようなチェックリストベースの判断基準を作ろうとしていた人が多かったけど、モバイルの発展によってコンテキストを重要視する考え方がメインになってきたという話もあってなるほどと思いました。
「世間に理解してもらえなかった」の部分において、やっぱりAppleの貢献は著しいもので、iPhoneやiPadの普及によって一般の人も「ユーザビリティ」がどんなものか理解しはじめたり、UXの導入が多くの会社で本格的にはじまるきっかけがAppleのビジネス的な大成功であることはほぼ全員同意していました。
「どうすればいいかわからず悩んでいた」の声を代弁したものとして、EuroIAの最後のスピーチ、情報アーキテクトのAbby Covertさんによる「Six things we still suck and four lessons to teach the kids(我々がまだヘタクソである六つのこと、また子供たちへの四つの教訓)」がそのような観点を分かりやすくまとめてくれていました。スピーチでは、いかに長い歴史の中で人々が情報を扱ったり分類したりすることに戸惑ってきたのか、またいかに今でもみんなが「情報」に困惑していて悩んだり苦労したりしているのかを500年の情報の歴史、またここ十数年の世の中の変化の話を交えて話してくれました。
「世間に理解してもらえなかった」の部分において、やっぱりAppleの貢献は著しいもので、iPhoneやiPadの普及によって一般の人も「ユーザビリティ」がどんなものか理解しはじめたり、UXの導入が多くの会社で本格的にはじまるきっかけがAppleのビジネス的な大成功であることはほぼ全員同意していました。
「どうすればいいかわからず悩んでいた」の声を代弁したものとして、EuroIAの最後のスピーチ、情報アーキテクトのAbby Covertさんによる「Six things we still suck and four lessons to teach the kids(我々がまだヘタクソである六つのこと、また子供たちへの四つの教訓)」がそのような観点を分かりやすくまとめてくれていました。スピーチでは、いかに長い歴史の中で人々が情報を扱ったり分類したりすることに戸惑ってきたのか、またいかに今でもみんなが「情報」に困惑していて悩んだり苦労したりしているのかを500年の情報の歴史、またここ十数年の世の中の変化の話を交えて話してくれました。
4. 私が東京で仲良くしている人たちはほぼ映画好きだったり音楽好きだったりしてカルチャーについての話題が枯れることがないのですが、現地で出会った人々とも「タランティーノ映画の中で一番好きな作品は?」と言った、非常に東京で普段話している話題そのままだったのが印象的でした。
最近UXデザイナーの才能というか素質的なものってなんだろう?というのをよく一人で考えていて、UXデザイナーたちはアーティストではなく、科学者でもなく、典型的なビジネスマンではないけど、これらの素養をいい具合に備えていないといけなくて、「いい具合」ってなんだというのを見つけるためにはまた絶妙なバランス感覚が必要かなと思っています。そのバランス感覚も含めて、後天的に学習したものではなく、何か生まれ持ったもので良いUXデザイナーに必要なものはきっとあるというのが私の意見です。
例えば「共感能力」です。共感する力はユーザーの立場でものごとを考える際に非常に役立つもので、自分ではなく、他の人たちがどう思って、どう行動するかをシミュレーションする能力はまさにこの「共感」から生まれてくるのだと思います。共感能力が強い人たちはすぐ登場人物だとかストーリーに共感しちゃうので、人並み以上にフィクションに入り込んで楽しむ傾向があるのではないかというのが私の仮説です。日本だけではなく、ヨーロッパでもUXをやっている人たちが情熱的に映画や小説の話をしているのを見て、自分の仮説がまたひとつ確かなものであると思いニヤリとしました。
5. 三日間にわたる熱く楽しいカンファレンスは最後のマイクセッションにて、「People & Process for UX Process」というワークショップを担当していたPeter Boersmaさんの突然のプロポーズとBirgit Geibergerさんとの婚約でめでたく幕を閉じました。私は最前列で「Oh my god 産地直送の生プロポーズや!!」と興奮しながら、EuroIAは人に出会って親しくなり結婚できちゃうほど親密なコミュニティなんだなぁと思っていました。UX Tokyoもこのようにあたたかく、やさしく、人間味溢れるコミュニティとしていてくれて、東京の大きいUXのイベントでも、プロポーズする勇者が現れることを楽しみに待っています。
2014年11月27日木曜日
UI Crunch #2
UI Crunch #1に続き、UI Crunch #2をスクーで受講しました。今回のテーマは「デザイナー不要論について語る」。ウェブサービス開発の現場におけるデザイナー不要論と5〜10年後の生存戦略が業界で話題になり、それ以来デザイナー不要論について色んなところで議論が行われたりして、関心が高まっていることを私も体験してきました。今回のUI Crunchは既存の「デザイナー」でいつづけるのではなく、何かを武器にすることでいかに自分を価値を高めることができるかという話がメインでした。(実際、不要論をテーマにするために、もともと準備してきたテーマを延期にしたとのことです)
それぞれのプレゼンについて、内容を簡単にまとめてみました。
UIデザイナー最終防衛マニュアル - Taiki Kawakami(Λ Structure Design/Designer)
UIデザイナーが現状を変えたいときにできることは、短期的には四つ。革命、転職、独立、趣味。長期的には啓蒙を行ったり、UIのコードに当たる部分(Wireframeだとか、Prototypeのようなロジックがわかるもの)を公開すると良い。自分でGunocyをリデザインしてみたが、その記事がバズった。その理由はやっぱりデザインにきちっと意図を加えていたからだと思う。デザインの裏にある「意図」を明らかにすることで理解されるようになる。
風呂場で考えるUIデザイナーの未来 - 上谷 真之(nanapi CCO/Designer)
風呂場で、つまり服を脱いで(=既存の考え方、フレームワークから抜けて)自分のことを考えてみた。こわす、ならべる、もどす、のプロセスで新しい自分に気づくことができた。肩書きも会社の名前も取っ払って、自分起点に物事を考えてみた。自分を会社や社会にあわせるのではなくて、環境を自分にアジャストすると考えると「おにぎりデザイナー」というタイトルが出てきた。肩書きはどうでもいいもの。自分でやりたいことをやりましょう。
UIデザインの価値 - 吉田 健吾(トレタ COO)
デザイナー不要論について、ブログを書いた。UIデザインはユーザーとの接地面であり、UIデザインが使えなかったりしてユーザー体験を害してしまうと意味がない。飲食店の例をあげると、従業員はみんな忙しくてなかなか電話に出られなかったりするので、電話しながら片手ですぐ操作しやすいiPadのアプリを作った。UIの使いにくさは全てコストに直結する。しかしりん議では多機能や低価格のようなものに比べて、デザインは大切に扱われてない。「UIなんて一年あればなれる」なんて言われたりする。現場で実際どのように使われるのかを根拠にしてデザインの価値を訴えたり、競争力として価値を証明していくことが重要。
経験に基づく「UIデザイナー」の必要性 - 藤川真一(えふしん)(BASE CTO/取締役)
エンジニア出身でウェブ業界は長い。かなり前から、営業で重要な仕様が決まり、制作部門が不満をかかえ、納得いかないので自分たちのコストで作っちゃって、開発部門がとばっちりを受けるといった悪循環が起きていた。そのような環境の中での、自分の昔の愚痴を紹介したい。デザイナーに求められる能力はグラフィック力だけではなく、「設計」できることも重要で、ウェブに興味を持っていること(=ゲームをやっている)も重要だと考えた。今もその基準は当てはまっていると思う。BASEで求める人材もそのような人。
デザイナー不要論でざわついているデザイナーがたくさん参加したところで、「実は不要な訳ない、自分の価値を高める努力をすれば必要なはずだ!」というよく考えると当然でもある話が多かった印象はありますが、当然のことだからこそどうすれば良いのかわからないというオーディエンスの悩みも伝わってきて、実際「給料をあげるためにはどうすればいいですか?」「採用の基準を教えてください」といった生々しい質問が飛び交っていたのも大変面白かったです。そのように質問に対して、決して現状をはぐらかしたりせず、パネルのみなさんの実際の経験に基づくためになる話がたくさん聞けてよかったと思います。
例えば、給料をどうすればあげられるかという質問に対しては、BehanceやDribbleに半年間投稿し続けると必ずオファーがくる、なんなら僕が会いに行きますという熱い回答が返ってきたり。日本では会社に対する守秘義務があるので自分で制作したものを社外に公開してはいけないという雰囲気があるけど、それは健全じゃないので業界的に変えていきたいという話もあって、大変共感しました。
UIデザインに関わる様々な業種の人(といっても、主にデザイナー)が集まって、現状を冷静に見つめた上で、これからのことを考える場が今まであまりなかったと思うので、このようなイベントが開催されていること自体もすごく有意義なことだと思いますし、さらに他社事情のようにすぐ使える実践的な話が聞けたこともよかったです。この取り組みがどのように変化して成長していくか、これからも楽しみにしています。
関連記事
第2回 UI Crunchレポート「UIデザイナー不要説について語る」
2014年11月5日水曜日
RE:DESIGN/Creative Directors Day3
今日でコンファレンスは終わりです。今日は午前中に三つのセッションがありました。
Ti Chang - We’ve Come A Long Way
初日のディナーで、Tiさんとは同じテーブルに座ることになり、彼女の犬の写真を見せてもらったり、その後も他のセッションで一緒になったりして、とても魅力的な人柄の人だと思ったので、どんなセッションになるのか気になって参加してみました。
"Hello, I am a sex toy designer"ではじまるプレゼンテーション。100年前には女性の性欲は病気とみなされ、お医者さんが女性の性器をマッサージして"治療"する過程でセックス・トイの原型となるものが使われた。その後ポルノ映画が発達し、セックス・トイは治療の道具ではなく快楽と関係するものであることを大衆に理解されはじめたが、公に話すことはタブーとされてきた。Tiさんがセックス・トイをデザインした理由は、ものづくりの全てのプロセスに参加したかったのと(そのために会社を立ち上げたとのこと)、また女性のために役に立つことをやりかったからだそうだ。あきらかに男性の視点でデザインされた色違いの大きいディルドではなく、本当に女性たちが使って喜んで恥ずかしがる必要のないものを作ろうとした。それでできたのがCraveの製品群である。
Stanley Hainsworth - Ten Years Of Instant Change
10年間のトレンドの変化でも見返すものだろうかと思って参加したのですが、想像したものとまったく違う形のセッションでした。ラウンジに入ると椅子が丸いレイアウトで配置されていて、お互いの肩をぶつかるくらいの狭さ。Stanleyさん曰く、AA(アルコール中毒のための匿名の集まり)のようなスタイルでやるとのことで、実際その通りでした。
Stanleyさんの個人的な体験の話からはじまる。LAで俳優になろうと思って暮らしていた。しかし突然親戚の一人が事故を起こし、その奥さんは死亡、本人は収監され、その夫婦の二人の子供をいきなり引き取ることになる。それをきっかけに、人生のパスが一転。キャリアパスも俳優からデザイナーに変わった。このような変化を括りぬけてくる際に、自分の幸いな無知(A blessed ignorance)が役に立ったと思っている。みんなも自分の人生を変化させた、できごとや気づきのことを共有してほしい。
実に様々な体験や気づきがその場で共有されました。これは私にとってはとても驚きで、コンファレンスというのは知識や洞察を共有する場だと思っていたのですが、このようにとても個人的な体験や感情まで共有することが可能であることに深く感動しました。最後に気づきを共有した人は、ベルギーに行ったときに2000種類のビールを見て興奮し、「誰かがこのビールをデザインしている」ことに気がついたと言います。そして、自分が好きなことをやるためにスタジオを作り、今は大好きな食品を扱う仕事をしていると言いました。デザイナーは世の中のみんなに対して、責任を持つとも言いました。なぜなら、彼がベルギーで体験したように、誰かがデザインしたものを他の誰かが触れるからです。この話は特に目から鱗でしたが、他にもたくさんの話を聞くことができて、自分の人生で起きた変化についても考えることができました。
Jonah Lehrer - On Failure
ここで出会ったみんなに私はCreative Directorのことはよくわからないけど、ラインナップの中で有名な人はいるの?と聞いてまわると多くの人がJonah Lehrerさんのファンだと言いました。The New Yorkerなどの著名なメディアに長く寄稿し、幅広いファンがいるようです。
マイリトルポニーというアニメを見ると、ポニーたちはお尻にタトゥーをいれている。それはポニーたちのアイデンティティーそのものである。そのタトゥーを見つける方法は一つしかない。私たちがそれを愛するかどうかだ。それはまるで下着のようなもので、意識してなくても常に自分に密着しているものであり、またそれはロメオとジュリエットと一瞬で燃え上がる恋とは違って、人生をかけてやり続けることでなければならない。Jonahさんの場合それは書くことだ。2年半ほど前に、剽窃のことで騒動になり、一度は書くことを辞めようと思ったこともある。しかし気がつけばまた書いていた。それが何かを愛するということ。また、そのときの失敗で気づいたことも多かった。楽で簡単というのはいつもベストなやり方ではない。何かを創造するということは大変なことであり、苦しいプロセスや失敗を抱擁することで良いよいクリエイターになれる。
変化に適応する能力だけではなく、変化しない何か(愛する何か)を持つことの重要性についてあまり考えたことがなかったなぁと思いました。マイリトルポニーから人生の哲学を導く洞察は素晴らしいものだと思ったので、これからは彼の寄稿などをチェックしてみようと思いました。
Ti Chang - We’ve Come A Long Way
初日のディナーで、Tiさんとは同じテーブルに座ることになり、彼女の犬の写真を見せてもらったり、その後も他のセッションで一緒になったりして、とても魅力的な人柄の人だと思ったので、どんなセッションになるのか気になって参加してみました。
"Hello, I am a sex toy designer"ではじまるプレゼンテーション。100年前には女性の性欲は病気とみなされ、お医者さんが女性の性器をマッサージして"治療"する過程でセックス・トイの原型となるものが使われた。その後ポルノ映画が発達し、セックス・トイは治療の道具ではなく快楽と関係するものであることを大衆に理解されはじめたが、公に話すことはタブーとされてきた。Tiさんがセックス・トイをデザインした理由は、ものづくりの全てのプロセスに参加したかったのと(そのために会社を立ち上げたとのこと)、また女性のために役に立つことをやりかったからだそうだ。あきらかに男性の視点でデザインされた色違いの大きいディルドではなく、本当に女性たちが使って喜んで恥ずかしがる必要のないものを作ろうとした。それでできたのがCraveの製品群である。
確かにこのデザインなら恥ずかしがる必要もない
彼女はもうセックス・トイを使うことを恥ずかしがる必要のない、Modernな時代が到来したと言っていましたが、セックスについて話すことはもちろん若者がセックス自体やらなくなった日本社会から来た私にとっては、そのような時代が来たんじゃなくて、彼女のような鋭い問題意識を持った人々がそのような時代を作り上げているのだと思いました。
Stanley Hainsworth - Ten Years Of Instant Change
10年間のトレンドの変化でも見返すものだろうかと思って参加したのですが、想像したものとまったく違う形のセッションでした。ラウンジに入ると椅子が丸いレイアウトで配置されていて、お互いの肩をぶつかるくらいの狭さ。Stanleyさん曰く、AA(アルコール中毒のための匿名の集まり)のようなスタイルでやるとのことで、実際その通りでした。
Stanleyさんの個人的な体験の話からはじまる。LAで俳優になろうと思って暮らしていた。しかし突然親戚の一人が事故を起こし、その奥さんは死亡、本人は収監され、その夫婦の二人の子供をいきなり引き取ることになる。それをきっかけに、人生のパスが一転。キャリアパスも俳優からデザイナーに変わった。このような変化を括りぬけてくる際に、自分の幸いな無知(A blessed ignorance)が役に立ったと思っている。みんなも自分の人生を変化させた、できごとや気づきのことを共有してほしい。
実に様々な体験や気づきがその場で共有されました。これは私にとってはとても驚きで、コンファレンスというのは知識や洞察を共有する場だと思っていたのですが、このようにとても個人的な体験や感情まで共有することが可能であることに深く感動しました。最後に気づきを共有した人は、ベルギーに行ったときに2000種類のビールを見て興奮し、「誰かがこのビールをデザインしている」ことに気がついたと言います。そして、自分が好きなことをやるためにスタジオを作り、今は大好きな食品を扱う仕事をしていると言いました。デザイナーは世の中のみんなに対して、責任を持つとも言いました。なぜなら、彼がベルギーで体験したように、誰かがデザインしたものを他の誰かが触れるからです。この話は特に目から鱗でしたが、他にもたくさんの話を聞くことができて、自分の人生で起きた変化についても考えることができました。
Jonah Lehrer - On Failure
ここで出会ったみんなに私はCreative Directorのことはよくわからないけど、ラインナップの中で有名な人はいるの?と聞いてまわると多くの人がJonah Lehrerさんのファンだと言いました。The New Yorkerなどの著名なメディアに長く寄稿し、幅広いファンがいるようです。
今回のコンファレンスの進行やプログラムのアレンジなどを担当したChristopher Simmons(左)とJonah Lehrer(右)
マイリトルポニーというアニメを見ると、ポニーたちはお尻にタトゥーをいれている。それはポニーたちのアイデンティティーそのものである。そのタトゥーを見つける方法は一つしかない。私たちがそれを愛するかどうかだ。それはまるで下着のようなもので、意識してなくても常に自分に密着しているものであり、またそれはロメオとジュリエットと一瞬で燃え上がる恋とは違って、人生をかけてやり続けることでなければならない。Jonahさんの場合それは書くことだ。2年半ほど前に、剽窃のことで騒動になり、一度は書くことを辞めようと思ったこともある。しかし気がつけばまた書いていた。それが何かを愛するということ。また、そのときの失敗で気づいたことも多かった。楽で簡単というのはいつもベストなやり方ではない。何かを創造するということは大変なことであり、苦しいプロセスや失敗を抱擁することで良いよいクリエイターになれる。
変化に適応する能力だけではなく、変化しない何か(愛する何か)を持つことの重要性についてあまり考えたことがなかったなぁと思いました。マイリトルポニーから人生の哲学を導く洞察は素晴らしいものだと思ったので、これからは彼の寄稿などをチェックしてみようと思いました。
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